『海街』ほか日常を描く吉田秋生5選*夏の100冊(2)
「る印 夏の100冊」第2回は、公開中の映画『海街diary』の原作者、吉田秋生の作品です。リアルで淡々として、とても繊細でせつない。そんな日常を描いた作品5つをご紹介します。
「る印 夏の100冊」とは、「今、心からもう一度読みたい」「今、心から人におすすめしたい」そんな視点で、私が好きな本をご紹介する不定期企画です。
『海街diary』
異母姉妹の4人と、彼女たちに関わる人物にまつわる様々なストーリー。大事件ではない、どこにでもあるけれど一人の人間には大きなできごと、それを受け止めながら、登場人物たちは生きていきます。
鎌倉が舞台で、知っている場所が出てくると、なんかうれしくなります。映画ではきっと、季節ごとの風景も美しく描かれていることでしょう。
『ラヴァーズ・キス』
鎌倉の高校を舞台に、高校生たちの恋愛、人が人を好きだと思う気持ち、をいろいろな角度から描きます。
『海街diary』より10年以上前の作品ですが、場所・時間・人物が完全にリンクしていて、朋章、マサの兄、風太の姉が重要な人物として登場します。制作上の時間の経過があるので、絵が変わっていたり、ケイタイが出てこなかったりします。
『櫻の園』
桜の木に囲まれた古風な女子高。そこでチェーホフ『櫻の園』を演じる演劇部の女子たちの物語。女子校のことなんか知らないのに、ああ、あるあるある~と思ってしまいます。
女子高校生の微妙で繊細な心の動きに、すでに大人だった私はまぶしいような感覚で読んだのを覚えています。今読んだら、もっとしみじみすると思います。
『河よりも長くゆるやかに』
こちらは男子高が舞台。男子校のことなんか女子校以上に知らないのに、ああ、あるあるある~と思ってしまいます。
表面上はいかにも男子高校生らしい、アホっぽい3人組のアホな日常。でも実は、彼らは重い現実を抱えていたりもします。いい意味で、少女マンガとは思えない作品。基地の街の雰囲気もいいです。
『ハナコ月記』
この作品は、せつなくはないです。ゆるいです。バブル期の同居カップル(本人がモデル?)の日常を描いている、エッセイ風マンガ。記念日のプレゼントとか、スキー行きで大渋滞とか、めちゃくちゃ時代を感じるネタが出てきます。
でも今読んでも帯の通り「オトコってどおしてこうなの?」「まったくオンナってやつは…」と、時代を超えて共感できると思います。
以上、「る印 夏の100冊」第2回は、日常を描く吉田秋生作品5選でした。
ではまた。第3回をお楽しみに。